日本の金融業界を牽引するSBIホールディングス(以下「SBIHD」)と、デジタル証券「renga」を展開するデジタル証券株式会社(以下「DS 社」)が資本業務提携契約の締結を発表し、デジタル証券(セキュリティ・トークン)業界に激震が走りました。
本記事では、本資本業務提携の概要を整理するとともに、DS社の山本代表への独自取材を敢行。
プレスリリースには書かれていない「提携の裏側」や、今後の投資体験がどう進化するのか、その核心に迫ります。
SBIHDとの資本業務提携:プレスリリースの要点
DS社は、2026年3月23日、SBIHDと資本業務提携契約を締結したことを発表しました。
今回の提携に伴い、SBIHD は子会社を通じてDS社の既存株主から発行済株式の20%超を取得し、DS社はSBIHDの持分法適用会社となります。
本資本業務提携の具体的な内容は、主に以下の2点です。
① デジタル証券の販売連携
DS社のシステム子会社であるオーナーシップ株式会社が開発・運用するプラットフォーム「OwnerShip」上で組成されたデジタル証券を、株式会社 SBI 証券(以下「SBI証券」)および DS社が委託販売などの方法により販売すること
② 新たなデジタル証券商品の共同開発
SBI証券をはじめとするSBIHDの関連会社とDS社が協力し、航空機、船舶、鉄道、美術品、知的財産権(IP)などの「オルタナティブアセット」を裏付けとした、新規性の高いデジタル証券の開発に取り組むこと
【独占取材】山本代表に聞く:提携の舞台裏と今後の展開
DS社代表取締役CEOの山本浩平氏に独自インタビューを実施し、提携の舞台裏とその野望を詳しく伺いました。
提携の経緯と「資金調達ではない」という真意
Q:今回の提携は、どのような経緯で実現したのでしょうか?
山本: SBIHD側からお引き合い(打診)をいただいたことで実現しました。
こちらから働きかけたものではなく、先方からお声がけいただいたという経緯です。
Q:一部では資金調達という見方もありますが、実態はいかがですか?
山本: 大手企業によるスタートアップの持分法適用会社化は、スタートアップの「資金繰り悪化」というネガティブな文脈で捉えられることもありますが、今回は全く異なります。
今回、新株発行による資金調達は行っておりません。SBIHDが子会社を通じてDS社の既存株主からDS社の株式を取得したものであり、DS社に資金は入っていません。
つまり、事業がうまくいっていないがための持分法適用会社化ではない、という点は強調しておきたいですね。
具体的な業務提携の内容

山本:私たちはデジタル証券という新しい市場を切り拓くために、組織の全リソースをこの事業に投入しています。
そうしたデジタル証券事業に「全集中」している組織としての熱量を、SBIHD側に高く評価していただいたと感じています。
なぜSBIHDはDS社を選んだのか
Q:提携によって、具体的にどのようなことが始まりますか?
山本: 大きく分けて「デジタル証券の販売連携」と「デジタル証券の共同開発」の2点です。
特に販売面で、SBI証券が持つ1,500万口座を超える圧倒的な顧客基盤へリーチできるようになることは、当社の事業成長において非常に強力な武器になります。
山本:SBIHDは、「金融と IT、メディアの融合」という構想を掲げ、その戦略の柱の一つとして、アニメ・ゲーム・漫画といった IP(知的財産)をトークン化したい狙いがあると聞いています。
将来的には、私たちのプラットフォームを通じて、IPをはじめとした新しいオルタナティブアセットをより多くの方々にお届けし、デジタル証券市場をさらに活性化させていきたいと考えています。

「オープンアライアンス」へのこだわり
Q:SBIHDと資本業務提携することで、他社との事業連携が制限されることはないのでしょうか?
山本: それはありません。
SBIHD・DS社ともに、「オープンアライアンス」を重視しており、顧客が最適なサービスを自由に選べるよう、競合他社とも手を組む姿勢を持っています。
今回の提携後も他社との事業連携が制限されることはありません。
将来の展望:金融商品を「コンビニ」のように身近に
Q:今後の市場動向と、その中で御社が果たすべき役割についてお聞かせください。
山本: 日本における資産運用の高度化は、国の施策として避けては通れない必然の流れであると捉えています。
その大きな潮流の中で、私たちは大手金融機関が金融商品を対面で販売する従来型のモデルではなく、投資家が複数の金融商品を比較して自由に選べる「金融商品のコンビニ」のような世界を実現したいと考えています。
私たちはあくまでも金融商品を自由に買える場所を提供する「プラットフォーマー」として、自社の商品を押し付けるのではなく、多種多様な金融商品がフラットに並んでいる環境を整えていく方針です。
Q:今回の提携は、そのビジョンの実現を加速させるものになりますか?
山本: もちろん、そう考えています。
SBI証券が持つ1,500万口座を超える巨大な顧客基盤にリーチさせていただけるようになったことで、自分たちのビジョンを実現するためのスピードアップ&スケールアップが可能になったと確信しています。

「デジタル証券のマーケットプレイス」と本資本業務提携のイメージ図
出所:DS社プレスリリース
経営体制と今後の決意
Q:今後の経営体制や意思決定のあり方に変化はあるのでしょうか?
山本: 提携後も経営方針や運営方針に変更はなく、これまで通りに事業を進めていくことを双方で確認しています。
経営の独立性は今後もしっかりと維持されますので、その点は揺らぎません。
Q:最後に、読者へのメッセージをお願いします。
山本: 大手証券会社が、自社も取り組んでいる事業領域を専業とするスタートアップ企業に相応の比率で出資するのは極めて異例のことだと考えています。
「DS 社にしかできない価値」を認めていただいたということであり、本当に嬉しいことですが、同時に非常に強いプレッシャーを感じております。
SBIHDの期待に応え、 ”デジタル証券のマーケットプレイスで、資産運用を当たり前に。” というビジョンを絶対に実現させたいと思います。
まとめ:デジタル証券市場の「新章」が始まる
SBI証券が持つ 1,500万口座を超える巨大な顧客基盤を背景に得ながらも、「オープンアライアンス」と「経営の独立性」を貫く姿勢が非常に印象的なインタビューでした。
お話を伺う中で、今回の提携は単なる自社事業の規模拡大が目的ではないことが明確になりました。
目指しているのは、大手金融機関が自社商品を優先する既存のモデルではなく、投資家が多種多様な金融商品を自由に比較・選択できる「金融商品のコンビニ」のような世界の実現です。
この提携は一企業の成長に留まらず、日本において資産運用やデジタル証券が「当たり前の選択肢」へと変わる大きな転換点となるでしょう。
私たちの生活に新しい投資の形が浸透していく、その「新章」が今、ここから始まろうとしています。
クラファンchでは、引き続きこの革新の行方を注視していきます。
