この記事は、8/18に開催された、クラウドクレジット株式会社、株式会社日本クラウドキャピタル、ソニー銀行株式会社による合同イベント「投資型クラウドファンディング最前線」のレポートです。
イベントページ:https://0819sonybank-crowdcredit-jcc.peatix.com/?lang=ja
当イベントは、それぞれ貸付型、株式投資型、ファンド型のクラウドファンディングサービスを展開しているクラウドクレジット株式会社、株式会社日本クラウドキャピタル、ソニー銀行による合同イベントで、それぞれの会社・サービスの概要・特徴を述べた後、参加者から寄せられた質問に答える形でクラウドファンディング業界の課題に関してパネルディスカッションを行うという内容のものです。
投資型クラウドファンディングがあまりフィーチャーされない中、その現状や今後の展望、各社の取り組みが理解できる非常に画期的な企画でした。
登壇者は以下の4名です。
貸付型クラウドファンディング クラウドクレジット https://crowdcredit.jp/
クラウドクレジット株式会社
大西 志麻里氏 CIO (Chief Investment Officer)
持田 智裕氏 商品部マネージャー
株式投資型クラウドファンディング FUNDINNO https://moneykit.net/visitor/sbg/
株式会社日本クラウドキャピタル
代表取締役CEO 柴原 祐喜氏(登壇予定の代表取締役COO大浦 学氏は欠席)
ファンド型クラウドファンディング Sony Bank GATE https://moneykit.net/visitor/sbg/
ソニー銀行株式会社
タイアップ営業部 クラウドファンディング推進課 課長
下重 敏文氏
それぞれのサービスの概要を以下に示します。
クラウドクレジット
・貸付型クラウドファンディング
・海外案件に特化しており、30か国以上のあらゆる企業に一口10,000円から出資可能
・経済的インパクトと社会的インパクトの両立したプロジェクトに投資が可能
FUNDINNO
・株式投資型クラウドファンディング
・個人投資家が非上場企業に直接投資可能な日本初のプラットフォーム
・経営者と投資家の結びつきが強く、両者が交流できるコミュニティが存在する
Sony Bank GATE
・ファンド型クラウドファンディング
・プロジェクトへの出資比率に応じて事業収益の一部をリターン
・共感・応援に基づく社会貢献性のあるプロジェクトに出資可能
パネルディスカッション
今回の目玉が、3社のパネルディスカッションでした。
このセッションはオンラインで参加者から募った質問の一部を抜粋し、それに登壇者が答える形で進んでいきました。
当日扱われた参加者からの質問です。
・クラウドファンディング業界の課題は何か
・新型コロナウイルスの影響はあったか
・各社各サービスの推しポイント
・今後マーケットは拡大するのか
・ユーザーはどのような層が多いのか
・プロジェクト掲載の基準
・今後の注力ポイント
お互いのマーケットをどう見ているのか
3社ともお互いの企業をライバル視しているのではなく、共にクラウドファンディング業界を盛り上げていく仲間として見ているとのことでした。
そもそもクラウドファンディング業界そのものがまだまだ成長のさなかにあります。
業界全体の健全な発展のためにも協業は欠かせないのでしょう。
クラウドファンディング業界の課題は何か
クラウドファンディング業界の更なる発展のための課題に関して各社とも提示していたのが「情報の透明化」です。
2018年に貸付型クラウドファンディングの投資先がようやく明示されるようにはなったとはいえ、事前情報の不明瞭な点は投資家に不安を与えてしまいます。
これに加え、クラウドクレジットの大西氏は、クラウドファンディング業界においてまだまだ透明化は進んでいない状況にあり、投資家に安心して投資をしてもらうための情報開示とファンド募集におけるストーリーの共有が必要であると発言。
日本クラウドキャピタルの柴原氏はクラウドファンディングが個人に焦点を当てた金融イノベーションであるとの視点から、IRの適正化や流動化が必要であると訴えました。
ソニー銀行の下重氏はクラウドファンディングへの理解・認知の向上が急務であり、特有のいかがわしさ・怪しさを徹底的に排除し新しい市場を切り拓いていくという心意気がなければならないと主張。
クラウドファンディングはインターネット上で資金を取引するサービスであるため、安全で透明性のあるプラットフォームの提供は業界全体の課題と言えます。
また、クラウドファンディングの投資商品としての魅力は少額から投資できることだけではなくプロジェクトないし企業への共感や応援したいという気持ちを持って前向きに投資ができるという点であり、3社ともプラットフォーマーとして投資先企業の長所を最大限アピールできるよう努めていくとの発言もありました。
新型コロナウイルス感染拡大の影響はあったか
新型コロナウイルスの感染拡大によってあらゆる産業が影響を受けていますが、クラウドファンディングもその例外ではないようです。
クラウドクレジットが新型コロナウイルス感染拡大のクラウドファンディングへの影響に関して、投資家への分配が一定期間遅れたと回答。
海外案件に特化しているため、貸付先企業の国の政府の方針によって状況が変容していることが原因であるそうです。
このような不測の事態であるからこそ、3社とも素早く正確な情報開示に努めているとのことでした。
一方で投資家の熱は先行き不透明な中でもさほど低下しておらず、コロナ前と同様に前向きな投資意欲が見られているそうです。
少額での投資が可能であり、オンライン上でほぼすべてのプロセスが完結するため、コロナ禍でも影響は受けにくく、投資家からは依然として人気があります。
各社各サービスの推しポイント
クラウドクレジットの場合、一口10,000円から海外の企業に投資ができる点が魅力だそうです。
FUNDINNOの場合、マッチングイベントなどの開催が功を奏し、投資先企業の経営者と投資家の距離が近い点と、非上場株の安定性が魅力であると回答していました。
Sony Bank GATEの場合、少額の投資が可能であるためポートフォリオが組みやすい点、登録者に対しテストを実施するなど、応援や共感に基づいた投資ができる枠組みを提供できている点を挙げていました。
リターンを得る以上に、血の通った投資ができるかどうかがクラウドファンディングでは重要なようです。
今後マーケットは拡大していくのか
今後のマーケットの拡大予想ですが、3社とも拡大すると回答しました。
根拠としては、欧米諸国でクラウドファンディングによる資金調達の事例がありマーケットも伸びているため日本でも同様の現象が起こるのではないかとされているからです。
しかし、市場規模自体はまだまだ小さく投資家が本格的に増えていくのはこれからではないかと予想されています。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響など不測の事態もあるため必ずしも順調に市場が成長していくわけではないとのことです。
ユーザーはどのような層が多いのか
投資家層に関しては、3社とも30~40代が多く、いずれも投資初心者ではないとのことです。
投資のポートフォリオの内の1つとしてクラウドファンディングを組み込んでいる投資家が多いようです。
言い換えると、ある程度投資に手慣れたユーザーが多いです。
他の投資手法との違いは、共感や応援がベースとなって投資意欲を掻き立てているという点で、その特色が投資家層を惹き付けています。
平均年収は各社とも500万円以上で、FUNDINNOのユーザーに関しては平均1000万円以上だそうです。
投資額が5~10万円と比較的高額であることに加え投資先企業のIPOを期待した投資であることが要因であると考えられます。
投資型クラウドファンディングは比較的少額からの投資が可能であるにもかかわらず、ある程度の投資経験者が取り組んでいることは意外でした。
プロジェクト掲載の基準
各社のプロジェクト掲載の基準についても列挙されました。
クラウドクレジットは独自の審査基準に適合しているかどうか、そして新規性の有無が重要になっているとのことでした。
定量的なデータは開示していませんが、集めた資金がどのように使われているかは随時シェアされているようです。
FUNDINNOの場合はインハウスのキャピタリストによる審査を行い、次に金融商品取引法に基づきリスクの洗い出しを行います。
Sony Bank GATEでは投資家の琴線に触れるか、社会的インパクトの有無、財務面の安定性、収益性の有無などが審査の基準となっています。
社会貢献性と収益性、この2つを両立した案件が審査に通過するということです。
今後注力するポイント
クラウドクレジットは、投資先企業や案件のリスクに関する情報開示、投資商品のパッケージ化、為替リスクを抑えた投資商品の開発に今後注力するとのことです。
FUNDINNOは事業計画書のブラッシュアップなどによる企業の成長支援、情報の透明化、セカンダリーマーケットの流動化に今後注力するとのことです。
Sony Bank GATEは、プロジェクトのラインナップの拡充による安定的な投資商品の提供、ソニーグループとの協業に今後注力する予定です。
このセッションではマーケット成長の過渡期にある投資型クラウドファンディングの現状を、業界を牽引する事業者から聞くことができました。
中でも「互いのマーケットをどう見ているのか」や「クラウドファンディング業界発展のために必要なこと」といった質問は、登壇者の回答によりクラウドファンディング業界の展望を浮き彫りにするような議論が展開されていました。
イベントを振り返って
投資型クラウドファンディングは事業者参入も相次いでおり、投資家からの期待も高く、これからますますヒートアップしていくと肌で感じることができました。
一方で課題もあり、情報の開示や予測可能な事態への迅速な対応などで、どれだけ投資家の不安要素を取り除き、信頼性のあるサービスに仕上げていけるかが投資型クラウドファンディングサービス普及のカギを握っているのではないかと思いました。
各社の動向に、今後も目が離せません!