不動産特定共同事業法(不特法)をわかりやすく解説!クラウドファンディング事業の免許取得のために必要なこととは?

不動産特定共同事業法(不特法)について徹底解説

少額での不動産投資を実現する不動産クラウドファンディング。

不動産特定共同事業法(通称「不特法」)は、不動産事業者が不動産を小口化し販売する上でクリアしなければならない許可や要件を細かく定めています。

不動産特定共同事業法の定める要件を満たし、事業の免許を得るためには、法令の改正内容を辿り、適正な事業運営のための体制を自社で整えていく必要があります。

この記事では不動産特定共同事業法の概要を踏まえたうえで、不動産クラウドファンディング事業を運営するためにクリアすべき条件についてわかりやすく解説していきます。

これから不動産クラウドファンディングへの参入を考えている事業者の方は、是非本記事を詳細までご覧ください。

不動産特定共同事業法とは

「不動産特定共同事業法」は、事業者が投資家から集めた資金で不動産を取得・運用し、得られた家賃収入・売却益などを原資とした収益を投資家に分配する不動産特定共同事業における、業務の適正な運営と投資家保護に関する仕組みを定めた法律です。

不動産事業者は、投資家により構成されている匿名組合もしくは任意組合を通して対象の不動産に対する出資を募ることができます。

また、不動産特定共同事業により、今まで資金を融通することが難しかった地方の物件にも資金が行き届くようにもなり、深刻な空き家問題・物件の老朽化問題の解決に寄与します。

不動産特定共同事業法は改正が適宜行われており、小規模不動産特定共同事業という、参入ハードルの低いものも登場し、免許取得・事業展開のチャンスが拡大しています。

不動産特定共同事業法に基づくクラウドファンディング

不特法に基づく電子取引業務

不動産クラウドファンディングとは、法令に沿って言えば「不動産特定共同事業法に基づく電子取引業務」を意味します。

つまり、インターネット上で小口化した不動産を販売したい場合は、不動産特定共同事業法の電子取引業務の免許を得る必要があります。

なお、不動産特定共同事業法には、事業者と投資家の、対面形式での取引も含まれています。

不動産クラウドファンディングを運営するには、後述の電子取引業務について理解を深めましょう。

不動産特定共同事業法の免許取得のための条件

不動産特定共同事業の運営のためには、不動産特定共同事業法の定める条件を満たし、法令に従って免許を得る必要があります。

不動産特定共同事業の種別

不動産特定共同事業の種別

第1号事業

不動産特定共同事業法1号免許は、事業者が複数の投資家から資金を調達し、不動産を取得・管理し、その収益を投資家に分配する事業を行うための免許です。 「匿名組合型」として知られ、事業者が不動産の管理や運営を担い、投資家は実際の不動産所有権を持たずに利益を分配される形態です。

第2号事業

不動産特定共同事業法2号免許は、不動産特定共同事業契約の締結を代理または媒介するために必要な免許です。事業者は投資家と不動産保有者の間に立ち、契約手続きをサポートする役割を果たします。この形態では、不動産の取得や管理は行わず、仲介や契約に特化して収益を得る仕組みです。こちらは1号免許とセットで取得している事業者が大半を占めています。

第3号事業

不動産特定共同事業法3号免許は、特定目的会社(SPC)を介した特例事業スキームにて不動産特定共同事業を運営するための免許です。第3号事業者は不動産クラウドファンディングの対象不動産を保有するSPC(特例事業者)から委託を受け、不動産の運用・売買などの不動産取引を行います。この特例事業スキームによる運用ではオフバランス化(財務諸表に記載されない資産や負債とすること)が可能となり、財政状況を健全に見せ、資金調達が有利になることが第1号事業と異なる利点となっています。

第4号事業

不動産特定共同事業法4号免許は、インターネットを通じて投資家に対し、特例事業者が当事者となる不動産特定共同事業の契約を勧誘し、契約締結の代理または媒介を行うための免許です。この形態では、不動産の取得や管理は行わず、仲介や契約に特化して収益を得る仕組みです。こちらは3号免許とセットで取得している事業者が大変を占めています。

資本金

不動産特定共同事業に必要な資本金の条件は以下の通りです。

不動産特定共同事業に必要な資本金


なお、平成29年の改正では、小規模不動産特定共同事業に参入する場合の資本金が定められました。

資格要件

平成29年の法令改正で、不動産特定共同事業への参入に際して、前述の資本金の準備と、宅地建物取引業の免許に加えて、国土交通省の定める以下の業務管理者の資格要件を満たす必要があることが定められました。

  • 良好な財産的基礎、構成かつ的確に事業を遂行できる人員構成
  • 基準を満たす契約約款(一般投資家を対象とする場合のみ)
  • 事務所ごとの業務管理者配置
  • 不特事業3年以上、実務講習、登録証明事業(ARESマスター、登録証明事業、ビル経営管理士、不動産コンサルティングマスター)

しかしこの要件は、肝心の地方の事業者がクリアするには雇用面やコスト面でまだまだハードルが高いため、主務大臣が主宰する講習を受けることで業務管理者の資格を得ることが可能となりました。

不動産特定共同事業法改正の変遷

 

不動産特定共同事業法は、投資家保護、地方創生の推進などの目的から、時代にフィットしたものへと適宜改正されてきました。

不動産クラウドファンディングに影響しているのは、平成25年平成29年平成31年の法改正です。 それぞれの概要を以下に示します。

不動産特定共同事業の法改正

平成25年の改正

平成25年の改正では、投資家保護の強化を目的に事業者の倒産隔離を促進するため、SPC(特別目的会社)を用いた特例事業について規定されました。

特例事業スキーム

倒産隔離とは、不動産特定共同事業者が倒産した場合であっても、不動産事業のみをSPC(特定目的会社)を設立することで分離し、投資家が不動産に投資した分のリスクのみを背負うだけで済むようにする仕組みです。

1号事業者の所有する不動産への投資は、実質的に1号事業者そのものへの投資を意味しました。

つまり、1号事業者が破産をすると、投資家は1号事業者の登記した不動産関連の負債のみならず、1号事業者の抱える全ての事業の莫大な損失を被るという事態が起こっており、投資家の負うリスクを減らす枠組みが必要とされました。

不動産特定共同事業法が施行された当初は、枠組みもあいまいであったため、不透明な事業者が増え、このような事態が頻発していました。

しかし、特例事業スキームを用いることで、事業者は倒産隔離が可能となりました。

特例事業 倒産時のメリット

参考:「特例事業とは?第1号事業との違いや投資家へのメリットを解説
参考:「SPCとは?クラウドファンディングとの関係は?特徴や利用するメリットを解説

特例事業では、不動産特定共同事業の主体である1号事業者は3号事業者へと置き換えられ、不動産の保有のみが可能で、不動産の取引・売買を許可制の元に行うことができるように定められました。

  • 投資家に交付する契約締結前の書面について、インターネット上での手続に関する規定を整備
  • クラウドファンディングを取り扱う事業者に対する適切な業務管理体制に関する規定を整備
  • 空き家や空き店舗の再生・活用事業に地域の不動産事業者が幅広く参入できるよう、出資総額が一定規模以下の「小規模不動産特定共同事業」の整備 ・事業者の資本金要件を緩和し、5年の登録更新制を導入
  • 適格特例投資家限定事業の創設

平成29年の改正

平成29年の不動産特定共同事業法の改正で特筆すべきは、登録制での小規模不動産特定共同事業が認められたことに加えて電子取引業務、すなわちクラウドファンディングの業務管理規定が整備されたことです。

小規模不動産特定共同事業

参考:「不動産特定共同事業の電子情報処理組織編成のためのチェックリスト!業務最適化・投資家保護のために必要なことは?

平成29年の法改正前は、1号事業者になるには1億円の資本金が必要で、3号事業者になるには5000万円の資本金が必要でしたが、この法改正により、小規模不動産特定共同事業に関して、更新期間5年の許可制が導入された上に、資本金1000万円から参入が可能となり、中小事業者にも門戸が開かれ、不動産を活用した地方創生事業のための基盤が整いました。

 

参考:小規模不動産特定共同事業をわかりやすく解説。クラウドファンディングで何を実現するか。

また、事業者と投資家間で結ばれる不動産特定共同事業契約の成立前の書面や、成立時の書面がデジタルで交付され、オンラインで不動産投資ための手続きを完結できるようになりました。

平成31年の改正

平成31年、国土交通省は、不動産特定共同事業法と不動産クラウドファンディングの一層の活用促進等を図ることを目的として、以下の施策を実施することを公表しました。

施策[1] 「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」の策定【4月15日~】
不動産特定共同事業法に基づく不動産クラウドファンディングを実施しようとする者が備えるべき業務管理体制、取扱プロジェクトの審査体制及び情報開示項目を明確化します。

施策[2] 不動産特定共同事業法施行規則の改正【4月15日~】
不動産クラウドファンディングと対象不動産変更型契約(不動産の入替を行う不動産特定共同事業契約)を組み合わせることにより、個人等による長期・安定的な不動産クラウドファンディングへの参加を促進するための内閣府令・国土交通省令の改正を行います。

施策[3] 不動産特定共同事業への新設法人の参入要件の見直し【4月15日~】
「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」を改正し、クラウドファンディングを行う新設法人について、不動産特定共同事業への参入要件を緩和します。

施策[4] 不動産流通税の特例措置の延長・拡充(平成31年度税制改正)【4月1日~】
特例事業者等に係る登録免許税・不動産取得税の特例措置について、2年間の延長を行うとともに、登録免許税については、工事竣工後10年超のプロジェクトや借地上の建物についても、特例の対象に追加されます。

施策[5] 特例事業者の宅地建物取引業保証協会への加入解禁【4月1日~】
一定の要件を満たす特例事業者について、宅地建物取引業保証協会への加入が可能となります。(詳細は各保証協会まで) 出典:国土交通省 報道発表資料『不動産クラウドファンディング 規制の明確化等により使いやすく~不動産クラウドファンディングに係るガイドラインの策定等~』

「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」

電子取引業務ガイドラインでは、以下の規定が明文化されています。

電子情報処理組織の管理(規則第54条第1号関係)

①基本方針・取扱規定等の整備 電子情報処理組織の管理に係る基本方針を策定・公表、 規程を整備する。
②体制整備(組織/人的/物理・技術的)
【組織】管理責任者の設置、定期的な点検・監査の実施、個人情報保護法等で示される レベルと同様の管理体制整備等
【人的】電子情報処理組織取扱者との非開示契約締結、教育・訓練、管理 責任者等への 適切な知識・経験を有する者の任命
【物理・技術的】アクセス者の識別・認証、適切なアクセス制御、不正アクセスの検知・ 分析等によるセキュリティの確保、定期的な見直し
③システム障害時への対応 適切な人員配置、重要なシステムのバックアップ・復旧体制の 構築、再発防止、当局への報告等システム障害時に対応する内部管理体制を整備する。
④外部委託先管理 電子情報処理組織の管理を外部委託する場合には、自らが講ずべき措置と 同等の管理体制の先を選定する等、必要かつ適切な監督を実施する。
⑤顧客財産への被害防止等 出金先口座の指定・変更手続きにおいて、転送不要郵便等により 顧客口座と名義が異なる口座への振込を防止する措置を講じる。

適切な審査(規則第54条第2号関係)

①人的構成等 営業部門から独立した審査部門の設置等、審査の独立性を確保する等
②審査項目等(主なもの)
【事業計画の内容】事業計画が合理的な根拠に基づいて作成されているか等
【資金使途】事業計画に照らし合理的か、不動産価値に照らし過大でないか等
【その他】利害関係の状況(利害関係の有無をホームページ等にて開示等 ③審査結果の公表等 審査結果の概要等をホームページ等において閲覧できる状態に置く等

クーリング・オフ

・契約成立時書面を受領した日から8日を経過するまでの間、契約解除できることを確認するための措置を講じる。
・契約成立時書面を電磁的方法により提供する場合、当該データが顧客にダウンロードされた際の通知機能を利用する等して、クーリング・オフ期間の起算日となる日を特定する。

重要事項の閲覧

・投資家の判断に重要な影響を与える事項は、電子取引業務及び事業の期間中、ホームページに記載する

分別管理の徹底及び金銭の預託

・預託を受けた金銭と自己の固有財産を分別管理 ・金銭の預託に当たって契約等に定める事項 預託を受ける金銭の範囲/送金手続/支払手続/預託状況の通知方法 ・投資意思の確認 預託を受けている場合は、少なくとも3ヶ月に一度は投資意思を確認する。

出典:国土交通省『不動産特定共同事業法 電子取引業務ガイドライン』

平成29年の法改正で初めてクラウドファンディング(電子取引業務)に関して言及されましたが、平成31年の改正で初めて具体的な枠組みが決定されました。

不動産クラウドファンディング事業にとってはまさに追い風とも言える状況となっています。 実際、電子取引業務の許可を得て不動産クラウドファンディングに参入する事業者は2023年現在約60社にも上り、規模を問わず今後も参入が相次ぐことが予想されます。

【最新版】不動産クラウドファンディングサービス一覧

不動産クラウドファンディング事業新規参入に際して

不動産クラウドファンディング事業は、少額投資で不動産投資ができる手法として注目されていますが、新規に参入するには様々な課題が存在します。新規参入する上で重要なポイントをご紹介していきます。

1. 事業計画の策定

不動産クラウドファンディング事業を立ち上げるには、まず詳細な事業計画の準備が必要です。 この計画には、どのような物件を扱うのか、投資家にどのような物件を提案するのか、そして資金調達の方法などが含まれます。市場調査を行う、目標とする投資家層や基本分析も慎重に進める必要があります。さらに、事業の安定性を確保するためのリスク管理も欠かせません。

2.「不動産特定共同事業法」免許取得

不動産クラウドファンディングを行うためには、「不動産特定共同事業法」に基づくライセンスの取得が必要です。このライセンスの取得には、基盤の整備や事業運営における適切な管理体制を証明する必要があり、非常に厳しい審査が行われます。審査には数か月以上かかることもありますが、ビジネスの立ち上げを目指しても徐々に進む可能性があります。必要書類の収集や要件の確認を怠らないことが重要です。

3. システム構築

クラウドファンディングプラットフォームのシステムは、投資家からの資金を受け取り、分配するための中心的な役割を担っています。特に、電子取引業務を行うためのシステムは、セキュリティや信頼性が重要です。 セキュリティに問題があるなら、投資家による洞察を踏まえ、事業の継続が鍵になります。
そこで、システム構築の際には、信頼できるシステム開発事業者と連携し、最新のセキュリティ基準に対応したプラットフォームを開発することをおすすめします。

4. 専門家との連携

特に、投資家との契約内容や、免許取得後のコンプライアンス規定的な問題を正しく対処するためには、法律専門家との連携が重要です。契約書作成や法のリスクの管理は、事業の円滑な運営に直結するため、信頼できる専門家とのパートナーシップを構築しておくことが推奨されます。

5.外部パートナーとの協業

事業者単体でこれらすべてを実行するのは非常に困難です。システム構築や法務対応、さらにはマーケティング戦略までを考慮すると、専門分野ごとに外部パートナーとの協業が要ります。外部パートナーに代行してもらうか、アドバイスしてもらうことで事業構築や運営を効率的に進めることができます。

不動産クラウドファンディング事業を立ち上げるにあたっての事業計画の策定や法律の免許の取得、電子取引業務を行うにあたってのシステムの構築などを事業者単体で行うことは非常に難しいです。

不動産特定共同事業法の免許の取得には数ヶ月以上もの歳月がかかる場合があります。

不動産クラウドファンディングを新規事業として始める場合は、弁護士やシステム開発事業者などと協力し、事業を構築していきましょう。

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